そう。あれはボヴがまだまだヅェルスのハイスクールに通っていた時なんだ────

『フォンキマンキーベイビー』〜ボヴの青春〜

 

俺はボヴ。ヅェルス工の2年だ。このヅェルス工業高校に転校したその日にトップに踊り出た。だが、俺は周りからヅェルス工の総番だとか持てはやされるのが嫌いだ。俺は俺であって。それ以上でも以下でも無い。俺はボヴだ。

「アニキ!来てくれ!また西高のやつらが因縁吹っかけてきたんだ!」

こいつはササ。俺の弟分みたいなものだ。転校初日にヅェルス工の頭とか言われていた片桐を俺がワンパンでぶちのめしたのを見ていたらしい。それから俺の事をアニキと呼び、弟分を気取っている。悪い奴じゃないが時々うざったい。E.YAZAWAに心酔している。
俺もE.YAZAWA断然リスペクトだ。

「んだよ!ササ!今、俺はいそがしーんだよ!!」

そんないざこざにいちいち構っていられない。なんてったってここはヅェルス。こんないざこざは日常茶飯事。きりが無い。

「そんないって暇そーじゃないか!頼むよ!ピンチなんだよ!西高の新井が出てきたんだよ!アニキ!」

西高の新井か・・・いずれ俺とぶつかるだろうと思っていた奴だ。

「しょーがねーな!どこだ?!新井のヤローは!!」

「さっすがアニキ!こっちでげす!」

「ウォラァァァァァァ!」

この時は少しも思わなかったんだ・・・
あんな・・あんな事件になるなんて・・・・・

 

 

「お前かーー!西高の新井ってハナタレはーーー!」

「なに?そういう口の聞き方を知らない小坊主は、わいの恐ろしさを知らんみたいやなーー!誰じゃーー!お前はーーーー!」

「ハッ!俺か?俺はボヴじゃーーーー!!」

新井は5人を従えて、ヅェルス工の3人をフクロにしていた。俺はこういう事は許せない。男ならタイマン。例え腐っても男であり続けたい。これが心情だ。これはE.YAZAWAの多分仰っただろう言葉でもあり、俺の最も気に入ってる言葉だ。

「お前がボヴか!こっちは6人!お前はドーグも無しで?一人?救世主気取りか?!クックック!噂どおりの大馬鹿野郎のようだな!」

「ヅェルス工の!ササもいるんじゃ!ぞ・・・」

新井にはササが眼中に無かったようだ。もっと声をハレ!ササ!

「アホンダレ!新井?ハッ!お前ごときにドーグとかいらねぇんじゃい!この俺の鉄拳で己らゼーインセーバイしてくれるわ!ホワチャァァァー!」

この後の俺は言うまでも無い。新井以下5人の西高の奴らを一人残らずセーサイを食らわしてやった。正直、ササはなんの役にも立たなかった。正直足手まといだった。いない方が良かったかもしれない。いや。いない方が全然良かった。

「アニキ!やっぱりつぇーや!」

「ササ!このバカモノ!当たり前だろが!
おい!新井!これに懲りたらヅェルス工に手を出さない事だな!どんな手を使ったって俺ほどの男は倒せまいて!ガハハ!」

「クッ・・・このヤローおぼえてやがれよ・・今に・・今に・・・」

「んじゃササ!そろそろ行こうぜ!俺、今の楽勝の戦いで腹減ったからお前のおごりな!
それじゃー西高の新井クン?出直してきたまえ!俺の胸ならいくらでも貸してしんぜよう!ハッハッハッ!」

「アニキー!ワリカンにしましょーよ!待ってくださいよ〜。」

 

それから数日後、事件は起こった。

 

 

その日はその年一番の暑い日だった。
ヅェルスではでっかいサーフィンの大会があったんだ。
ヅェルス中はもうお祭り騒ぎさ。

角のバーのマスターなんて泳ぎも出来ないくせに大会に出ようとしていたし、スーパーのおばちゃんなんてこれ見よがしに水着のショー。それをひやかしながらオヤジどもはビールをかっくらう。

こんな事もあった。ヅェルス一の金持ち、ブルンチの家にケチなこそ泥が入った。奴としてみればお祭り騒ぎに乗じたつもりだったのだろうが、ヅェルスのブルンチという男を知らなすぎた。

ブルンチは金に対しての執着心が人一倍すげー。屋敷の中に入れたとしてもそこには凶暴なドーベルマン10匹が待ち構えている。このドーベルマンはそこら辺のガードマンより役に立つ。

動物は嘘をつかない。これはブルンチの口癖だが、マジ頭がいいんだ。絶対ブルンチの命令にしか反応しない。たまたま通りかかったポリスの話じゃ奴は庭でヒーヒーいいながらドーベルマンに追われていたらしい。馬鹿な奴だ。だけど、これは俺の話には関係無いことだ。

 

俺はいつものように学校の屋上で空と戯れていた。すると、片桐一派の久保が血相かえて飛び込んできたんだ。

「ボヴ!やばい!すぐ校門に来てくれ!ササが!ササがっ!!」

俺は一目散に飛んでった!ササは校門の前で血まみれになって倒れていた・・・

「ササ!ササ!どーした!!誰にやられた!!!!」

「ア・・アニキ・・・すいません・・・」

「いいから!誰にやられたんじゃ!!!」

「ア・ラ・・イ・・三・丁・・・目・・ボー・・リ・・ン・・・グ」

「わかった!新井なんだな!ボーリング場にいるんだな!!もう安心しろ!俺がきっちりセーバイしてやるから!!なっ!」

「やっぱ・・・ア・・・ニ・・・キ・・は・・・・サイ・・・コ」

「おい?!しっかりしろ!!しっかりしろよ!!!ササ?!ササ?!ササヤマァァァーーーーーー!!!!」

 

 

「ボヴ。やっぱりこれは新井の罠だって。一人で行くなんて無茶だ。」

久保はしきりに俺を止めようとした。
いつも小突いたり、おごらせたりしているが、ササは俺の舎弟だ!その舎弟がやられといて兄貴分の俺が黙っているなんて出来るわけがない!

「いいか!これは俺の問題だ!俺一人でオトシマエをつけなきゃいけねーんだよ!男として!わかったか!!」

俺は単身、今は使われてない三丁目のボーリング場に乗り込んだんだ。


ボーリング場には、やはり西高の奴らがゴマンといやがった。

「新井ーーー!ボヴじゃー!!よくも俺のブロウをやってくれたなーーー!わかってんだろーなー!!」

俺は正面から入っていくと、西高の一人がニヤニヤしながら近づいてくる。俺はガチンとパツイチぶちかまして、「サンシタはだーとれっ!!!」一喝。俺は新井がいるボーリング場へと入っていった。


「カッカッカッ!やっぱお前は大馬鹿者じゃのー。一人で何ができるっちゅーんじゃ!」

「あほぅ。お前ゴトキ、俺一人で全然コトは足りるんじゃ!」

「ハッ!お前の目は節穴か?よく周りを見てみろよ。何人いると思っているんだ?こいつらは表の奴らとは違うぜ?それを一人で?カッカッカッ!」

実際、新井の言うとおりだった。俺一人じゃ運が良くても新井の目の前にいけるだけで、やられちまうだろう。その時だった。

「ボォヴ!水臭ぇーじゃねーか!ヅェルス工の一大事に俺らを呼ばないなんてよー!!」

片桐たちだった。久保がどうやら片桐に報告したらしい。

「しょがねーからお前は新井をゆずってやるよ!俺たちはペーペーどもで我慢してやるからよー!」

俺は正直嬉しかった。昨日の敵は今日の友とはよく言ったもんだ。

「おーよ!新井?よくもササをやってくれたな。このボヴがお前をセーバイしてくれるわ!」

勝負は一瞬でついた。俺の渾身のボヴファイヤーが火を放ったんだ。

「いってらっしゃい!」

そう。ボヴファイヤー・・・俺の必殺グーパンチ!

「いってきまーーーす!!」

新井は海の藻屑と消えた。これで当分は新井も動けないだろう。他の西高の奴ら?片桐たちの鉄拳で全員のびてたさ!

俺はヅェルス工2年ボヴ!
ブロウに囲まれて青春を疾走している!

 

ボヴペイヅへ